家に戻って最初に見たのが妻の姿だ。 体を硬直させてそこにある物も、いる者も見ることができないように苦痛の色を浮かべている。 その目に写っているのはきっと今ではない。 そんな妻を見ていると愛しさと目を逸らしたくなる気持ちが乱れながら顔を出す。 息子の信弘はそんな母親の姿をあきれたように見ていた。 鍋を崩れさせずに激しい音を聞かない方法を得ても、すぐに妻が音を恐れなくなるのはムリだ。