おかえりの言葉(短編・完結)

一ヶ月見かけなかった時はさすがに逃げたのではと心配したものだ。


でも父は「久しぶり」と、さっきの鍋みたいに手を上げて土産をドサッと自分たちの前に置く。


普通、出張に行くたびに土産を買ってくるものなのだろうか。
 

今回の土産は箱いっぱいのミカンだった。


スーパーでも買えるじゃないかと思いつつ、信弘はそれを暖房のきいていない部屋に運んだ。
 

まだ動かない母は、父が戻った事に気づいていない。


それを父は子供をあやすように抱いてコタツまで運んできた。