おかえりの言葉(短編・完結)

母は転がっていた買い物袋から野菜や肉を取り出したかと思うと、激しい金属音をたてた。


鍋を出す時に上の物をのけないで引っぱるので、彼女はたいていいつも鍋を雪崩れさせる。
 

恐ろしい物を見たように固まる母をしばらく見て、信弘は立ち上がった。


しばらく動けない母に代わって自分が拾わないといけないのだ。


「ケガしてない?」


母はチラッと横目で信弘を見て、また鍋に視線を戻した。


もとから大きな母の目は、取り出せそうなほど見開かれている。