暗い部屋にただ一人(短編・完結)

「これは売ってしまったらどう?」


そんな風に言われた。


「でもこんな毛色の女、見世物小屋くらいしか買ってくれないわよ」


「うちで育った娘だって知れたらどうするの?」


僕は小さな頃から自分のことを『僕』と呼ぶようにしつけられた。


髪はときどき坊主頭にされたけれど、背が伸びるにつれてみんな僕に触れるのを怖がった。