○魔王城(魔王討伐)

瓦解した魔王城、魔物や人々の死体が転がる中、魔王と勇者は二人きり
魔王の胸元には勇者の持つ聖剣が刺さっていた。

勇者「これであなたも終わりだ。世界の平和は守られた」

魔王は笑う。

魔王「世界の平和?たかが魔王如きをことした程度で?その程度で守られる平和なんぞありはしない。私がいようがいまいが、貴様らは勝手に殺し合い、奪い合い、平和を自らの手で壊しているではないか。本当に世界の平和を守りたいければ、どうすればいいか。簡単な話しだ。貴様ら人間、全てを殺し尽くせばいい」
勇者「俺は勇者だ。人を守り、人の為に生きる勇者がそんなことするわけがないだろ」

勇者は憤る。
魔王は嘲る

魔王「”できない”ではなく”してはならない”のか?」
勇者「・・・・」
魔王「人の為に生きるのが勇者か?哀れだな。そんなお前の為に生きてくれる奴はどれだけいる?」
勇者「・・・・」
魔王「いないのか?一人も?」

魔王は大声をあげて笑う。
胸元に聖剣が刺さっている為、吐血し咳き込む。

魔王「お前は勇者ではない。人の為に生き、国の為に生き、世界の為に生き、そして死んでいく。己れを優先することを許されず、人々の語る”美しい生き方”とやらに当て嵌められた生き方しか許されず、そこから一歩でも踏み出せば断罪が待っている。そんなのは勇者ではない。ただの奴隷というのだ」

勇者、驚き目を見開く
魔王、初めて見る人間らしい勇者の顔に満足そうに笑いながら死ぬ