君から声がかかる前に

「おかえりー。どこ行ってたの?」

リビングから声がしたと思ったら、珍しく玄関まで来る母さん。

「あら!優弓ちゃん!いらっしゃい」

「あの……。もし迷惑じゃなかったら今晩泊めてくれませんか?」

遠慮してるような喋り方。

「もちろん!いつでも無許可で泊まってくれていいのよ」

テンションが上がってる母さんを見て、安心したようだった。

「お邪魔します」

「はい、どうぞ」

「椿の部屋行こ!」

「ん」

屋上とは違う、少し元気に戻った優弓。

それを見て、よかったと心から思った。