君から声がかかる前に

玄関をでて少し歩くと、家が五軒分ほど離れた所で月の光に照らされ、まるでスポットライトを浴びているような優弓が立っていた。

ゆっくりとこちらに振り向いて口を開いた。

「……今までありがとう。椿のこと、大好きだったよ。さよなら、椿」

寂しそうな、消え入りそうな声で言うのが聞こえた。

また、引っ越すのか……。

住所だけは聞いておかないと。

「今度はどこに引っ越すの?」

「……ひみつ。またいつか会おうね」

遠く離れているのに、何故か優弓の声は耳元で言われているかのように近くに聞こえた。