「ねえ、椿?」

涼しくなってきたある日の帰り道。

「明日の約束、忘れてないよね?」

そう、僕に話しかける声はなんだか寂しげだ。

「あぁ、もちろん。あれだろ?」

少しでも明るくしようと、少し声のトーンを上げて返答する。

「そうそう。あれ」

空に向かって人差し指を向ける僕を見て、優しい笑顔で頷く優弓。

優弓は綺麗な黒髪で、いつもはストレートだけど今日は髪の先だけくるんとしている。