君から声がかかる前に

表示されている到着地を再確認して、「降ります」と書いてあるボタンを押す。

それと同時に、「次、停ります」という女性の声のアナウンスが、繰り返し話す到着地の説明を遮って車内に響く。

安定のその声を聞いて、交通機関用で作ってもらったICカードをカバンから取り出していつも通り停車するのを待つ。

停車してドアが開いたのを確認したあと、カードをかざして外に出る。

目の前は正門。

教室まで、あとちょっと。

「椿じゃん!おはよー!」

嫌に明るい声に思わず振り向くと、咲が立っていた。