君から声がかかる前に

急いで制服を着て、玄関まで走る。

「制服着てどこ行くの?」

リビングから呑気な母さんの声が聞こえてきた。

「学校!寝坊!」

なんで起こしてくれなかったんだよ、という意味の怒りを込めてぶつける。

「今日は祝日じゃない。もう少し寝るもんだ
と思ったわ」

「祝日……?」

カレンダーを見てみると、今日の数字は赤かった。

「もうちょっと寝る……」

「そう?おやすみ」

せっかく着た制服を脱いで、ハンガーにかける。

ダボッとしたパジャマをもう一度着て、布団を被った。