君から声がかかる前に

中は、きっと僕と同じで先生から貰ったたくさんの思い出だろう。

あの重さは、忘れられない。

多分、中身はまだ机のどこかに眠っているはずだ。

「じゃあ僕のも書いて」

そうランドセルを渡すと、「忘れてた」と言っているような顔がこちらを向いていた。

「せーの!」

二人同時に寄せ書きを見せると、「大好き」とお互い書いていて。

僕の書いた「大好き」は、どっちの意味だったんだろう。

恋愛?幼なじみ?

あの頃の僕は、まだそんなこと思わなかったのかもしれない。