君から声がかかる前に

「ありがと」

「俺が起きててラッキーだったな」

「ほんとに。ノート真っ白で終わるとこだった」

平等院鳳までしか読める字で書いていなかった。

シャープペンで寝る寸前に書かれたであろう読めない字と、もうぐちゃぐちゃな字を消して書き直す。

幸い、消されているところは無いように見えた。

必死で黒板を書き写していると、チャイムがなった。

先生はチャイムと同時に旬点を書いた。

「はい、ここまで書き写したら終わりね」

みんながペンを置く音がする中、僕はまだ書いていた。