君から声がかかる前に

「なるほどな」

バス停までの少しの距離を二人で歩いていると、咲が思い出したように言った。

「そういえば、優弓ちゃんは?」

「先学校行っただろ」

「バス乗らないの?一緒になるはずじゃん」

「朝のウォーキングついでに一つ先のバス停まで歩くんだって」

「なるほど……椿もやったら?」

「運動は嫌い」

「だから足遅いんじゃない?」

「僕が走るシーンなんてないから、早く走る
必要ない」

「あるかもしれないじゃん。例えば遅刻とか」