君から声がかかる前に

「いえ、僕もちゃんと前を見ていなかったので……。でもお食事、いいですね」

「ほんとですか?」

初めて会ったとは思えない。

そう思ったからなのか、知らない人からのご飯の誘いに初めて乗った。

何かを理由に繋げようとした感じも、なぜか悪い気はしなかった。

上司からの誘いも、適当にそれっぽい理由をつけて断る僕が。

僕は初めて優弓以外の人に恋をした。

新しい気持ちで頑張っていこうと思える。

これからの生活が楽しみで仕方がない。

優弓と咲を応援しながら、自分のことも頑張っていこう。

そう、心に誓った瞬間だった。