僕は、姉の事故から暫く経って、警察が何も動かない事を確認してから、裏の世界に足を踏み入れる事にした。

 両親は、姉の事故後、犯人探しに取り組もうとすると、働いている職場から圧力がかかり、このままだと姉の入院費用を払えなくなると脅され、涙ながらに犯人探しを諦めたらしい。

 僕は、両親が暗いリビングで泣きながら話しているのを聞き、もう自分がやるしかないと決意した。

 僕は、姉に似て平和主義者の両親の事も好きだ。
 両親は、良く人に優しく親切にするように言ってきた。そうしたら、いつか、困った時に助けてくれると言っていたからである。

 それは、大きな間違いだった。

 僕達家族が困っていた時、誰も助けてはくれなかった。
 そればかりか、僕達の邪魔をしてくる始末だ。

 もう、僕は誰も信じない。
 僕の邪魔をする奴は全員ぶっ潰してやる。
 大体、僕はいつも自分だけでは何もできないと思っていたが、ぶっちゃけ、僕1人の方が何でもできた。
 手段を選ばないし、倫理観なんて捨ててしまえば何でもできる。
 自分の頭脳とこの身体能力があれば、不可能は無いのかもしれない。

 姉の言葉を思い出す。
 「梓ちゃんはね、何でもできるんだよ。梓ちゃんが本気を出せば、この世の全ての人間が梓ちゃんの下僕になるよ。梓ちゃんがそのお顔を出せば、だけどね。お姉ちゃんは、梓ちゃんのお顔が隠れているから、今の平和な日常があると思っているけど、ちょっとだけ、そのお顔を出してみるつもりはない??お姉ちゃん、梓ちゃんが無双しているところを見てみたいな〜」

 と言っていた。姉の言っている事は正しかったのかもしれない。
 僕が前髪を上げて生活をするようになってから、僕が何かをお願いすると全ての人間が言うことを聞いてくれるようになった。
 言うことを聞かなさそうな奴には、最初にその辺の壁や床を軽く破壊してからお願いするようにしたから、本当に簡単に言うことを聞いてくれる。