梓視点
僕は、龍道さんに会って、組長は誰ですかと聞いた時に、俺は組長が誰なのか知らされていない、知っているのは先代の組長(俺の父親)が6年前に亡くなった事だけだ、と言われた時から、何かが引っかかっていた。龍道さんはその後、少しだけ言い辛そうにこう続けた。
「……俺は、世間様や裏社会では、獄門組の跡取りとして見られているが、実際のところ、俺は先代組長の妾の子どもだ。……組長には仲の悪い本妻がいて、その本妻が男児を出産したという情報を聞いた事がある。……俺は、一度もその子どもに会った事は無いし、本妻も片手でおさまる回数しか会った事は無い。本妻は、外国のマフィアの娘で、日本人ではないんだ。……先代組長は、外国の血を忌み嫌っていた。……獄門組に外国の血が入る事が嫌だったらしい。……俺は、そんな頭の固い先代組長の事を理解する事はできなかったし、本妻の事を大切にした方が良いと思っていた。…………だから、多分、今の獄門組の組長は、その先代と本妻の息子だと俺は思っている。……獄門組は6年前から新しい事業をどんどん開拓していくようになっていったんだ。それと同時に、獄門組はより一層殺しと拷問に力が入り始めた。今までだと手が出せなかった人間まで殺しと拷問を行うようになった。……獄門組がより一層闇深い組織になったんだ。組内でも裏切り者には死よりも重い罰を与えるようになっていった。……獄門組は、俺が手に負えるような組織では無くなった。……それから、俺は獄門組の組長にある日は来ないと悟り、一生若頭止まりであるなら、せめて好きな事をして生きていこうと決めた。後は、そうだな……俺は今の組長に会う機会があれば、こう言いたいかな。今の組長は、俺から見ると自分の事が嫌いなように感じるから、もう少し自分を好きになる努力をした方が良いと思う。組長の事を大切に思っている人間にもう少し目を向けた方が良い。まぁ、俺のような立場の人間が言えた事じゃないけどな」



