君の見ていた空


 先代組長は、静かに泣いていた。

 ボクは、先代組長のところに行く前に、先代組長の側近全てを殺していた。

 「ハジメマシテ。ボクの名前は竜胆と言います。組長と本妻の1人息子です。……申し訳ないけど、お宅の組長を殺しに来たから、側近の皆様もその前に殺しておこうと思い、来ました。……ボクは本妻の息子なのに、どうして本邸で暮らせないのか疑問だったけど、龍道さんがいたからなんだね。……ボク、龍道さんに意地悪しちゃったよ。……本邸に生首を度々持ち込んでいたのはボク。龍道さんが憎たらしかったから、生首を見て、少しはココはヤクザだよって自覚してくれないかな?って思ってさ……。あの人、殺しの経験無いよね。……アイツに組長をヤラせる訳にはいかないなぁ。……だからさ、組長と側近はボクの為に死んでヨ。獄門組ってさぁ、龍道さんみたいに綺麗な人間には似合わないから、ボクが組長になって、あの人は一生若頭でいてもらおうと思ってね。……だから、ボクがちゃぁんと、オマエ達を殺してこの本邸に血の匂いを刻みつけてアゲル」

 側近達は、一切の抵抗がなかった。

 むしろ、ボクの名前を聞いて、竜胆とは良い名前を貰いましたね。貴方様が思っているより、私達側近は、貴方様の事を知っております。竜胆様、龍道さんを殺さないでいただいた事を感謝致します。また、妾やその御息女の方々を殺さないでいただいた事を感謝致します。……獄門組は、竜胆様の物でございます。我々は死にますが、私達の後に側近になるのは、竜胆様の絶対の下僕になる事を約束致しましょう。
 鬼ヶ城竜胆様、獄門組をよろしくお願いします。我々が、組長を止めることができず、このような形になってしまった事、地獄でも侘び続ける所存です。

 あまりにも物分かりが良過ぎて疑問だったけど、先代組長の話を聞いて納得した。

 悪いのは、先代組長だけだったんだナ。

 「フフッ、イイヨォ。謝らなくて。お母さんの事も薄々察していたし、龍道さんの事も殺さないであげる。……だけど、殺しと拷問だけは辞めない」