ボクは、母親を殺した8歳の夏から、好きに生きる事にした。
龍道さんは、その時17歳だったから、ボクは龍道さんが20歳になった時に先代組長を殺す事にした。
丁度、6年前の話かな。
「……田中くんは、狂っている訳じゃないよ。……多分、獄門組の環境が田中くんをそうさせたんだ。両親が田中くんの事を一度も見なかったから、自分の存在意義を出す為にも殺しと拷問の天才になった。……僕は、田中くんよりも恵まれた環境にいた事を今実感している。田中くんには味方とか、仲間とか、誰も居なくて、ずっと1人だったんだね」
……ハハハ……凄いなぁ。梓くん。
そうだね。ボクはずっと1人だったのかもしれない。獄門組も龍道さんも大嫌いダヨ。……だから、先代組長も殺したし、母親も殺した。皆、獄門組しか見ないから、最後の瞬間くらい、ボクの事を見ろって思ってさ……。
そう言えば……、先代組長は死ぬ前にこんな事を言ってきたかもしれないな……。
「……竜胆、もう、殺しや拷問は辞めなさい。……私が全て悪いのも充分理解しているし、本妻と竜胆のあの場面を見て見ぬ振りした私の言葉がもう竜胆に届かない事も理解している。……竜胆、私は先に産まれた龍道を優先して育てたし、1番末っ子の竜胆を放置した自覚はある。他にも子ども達がいて、竜胆以外の子達は可愛がってきていた。……私は、本妻の事が苦手で避けていた。……全て私が悪い。……子どもができたと知った時、私はお腹の子を何度も殺そうとした。……本妻はその全てを回避してきた。……私達は、最低の親だ。……本妻は、竜胆が産まれてくる時から、今まで竜胆を殺されないように必死だったんだ。……竜胆を殺されないようにする為に殺しと拷問を徹底的に仕込んで、誰にも負けない子どもに育てたんだ。……あの人は、竜胆を最後の最期まで、愛していた。……竜胆を誰にも負けない子どもにする為に最終的に自分が悪者になって、竜胆、君に自分を殺させる事を最後の子育てにした。……こんな事をさせてしまったのは、全て私の責任だ、申し訳ない」



