〇〇視点

 うちの高校のアイドルが事故に遭って半年後、大事件が起きた。

 九条凪沙様には、双子の弟がいて、その名は梓と言ったのだ。
 正直な話、同じ名字だったのに全く気が付かなかった。

 凪沙様の事故を起こした犯人が見つからないまま、この事件は終わってしまうのかもしれない……と思っていた時に、九条梓は動き出したのだ。

 彼は、今まで前髪が長くてほぼ顔が見えなかったのだが、前髪を短く切ってその顔を出したのだ。

 ちょっと次元の違う美形だった。凪沙様もとてつもない美形なのだが、この九条梓は、神様が作った最高傑作のような顔面偏差値をしていたのだ。

 しかし、その美貌は怒りというか、悲しみ、絶望、この世を呪い殺すようなオーラに包まれていて、ちょっと息をするのが苦しくなるような殺気に満ちていた。

 今まで凪沙様が双子なのも知らなかったし、その弟の梓さんがお姉さんの事をとても大切に思っていた事もこの学校の生徒や教師はほぼ誰も把握していなかった。

 この梓さん、顔を出して登校してきた初日、群がってきた人達に向かって強烈な一言を放ったのだ。

 「蛆虫(うじむし)みたいに、僕に群がってくるな。殺したくなるだろう?……もしかして、僕を殺人鬼にさせたいの?」

 場が凍ったのは言うまでもない。

 彼は、本気だった。物凄い冷笑で近くにあった、机を思い切り蹴飛ばしてそう言い放ったのだ。

 その後、ポツポツとこの九条梓さんの情報が得られたのだが、彼は天才少年である事、身体能力が化け物並みな事、九条凪沙様の双子の弟である事、お姉さんが大好きな事、事件の捜査に進展がないから彼が動き出した事を知った。