ジェラシーを彷徨わせて




「ばか、擦んな」


やさしい声で咎められる。


手首に添えられていた熱が指の腹をなぞったら、指ぜんぶをぎゅっと包みこむみたいに握られた。


昔から変わらない、肌に馴染んだ手のひらの温度に、絆されてしまいそうになったのは一瞬。


「……ていうか、うそだし」

「、ぇ、うそ……、っ、!ばか!!むかつく!」

 
恨みの視線をこめて凪を睨んでいれば、不意に頬をむにゅっと潰されて、もう片方の手で宥めるように頭を撫でられる。


「それ、似合ってる」
 

髪型を崩さないように、という凪なりの配慮なのか、いつもよりも髪をなぞる手つきは控えめで、……そういう、遠回りながらも丁寧なカタチをしたやさしさを向けられると、一気に怒りのボルテージが萎んでしまう。


でも、簡単に絆されるちょろい女と思われたくなくて、表面上だけでも保とうと、くちびるを尖らせてみせる。



「……にあってる、だけ?」

……とことん面倒くさい女になってやる、という、わたしなりの仕返しだ。