足音に気をつけながら窓側へと歩みを進め、アイボリーのカーテンに手を掛ける。シャラン、と布が擦れるような音が鼓膜を掠めたあと、視界をやわらかな光が覆う。
 

こぼれる朝のひかりに目を細めながら、ゆっくりとしたスピードでカーテンを引いて──────……と。


「朝だよ、おきよう?」
 

あまったるく、やさしさだけを掬い取ったような声色を浴びせれば、んん、と微かに身じろいだ"彼"はそのままくるんと寝返りを打とうとするので、そうはさせないと先回りをするように手を伸ばす。

 
「なぎ、あさだよ。おきて?」

「……………」

「なぎ、なーぎ?」

「……………ん、」


ひかりに反射して淡い輝きを纏う髪は、いつ触れてもさらさらと指通りがよくて、やわらかい。


ヘアオイルとかちょっとお高めのドライヤーとか、髪質に特別気を遣っているわけでもなさそうなのに、こんなにも綺麗でサラサラなんてちょっと納得いかない。


……凪の髪は世の女の子の敵だと思う、とこの前伝えてみたら、ふ、と見下ろすように鼻で笑われた。きらいだった。