幸せになりたい人

彼は私に懺悔がしたかったのです。
私への罪を認め償うことで、全てが元通りになると信じていました。
おそらく、それは真実であり、たったそれだけのことで、彼は望みを叶えることはできたのだと思います。
たったそれでけのことで。
執拗に私に懺悔の機会を請いました。
彼は幸せになりたかったのです。
そして私はたった一度の機会すら与えませんでした。
彼は幸せになれずに今も過ごしているのかもしれません。

私は私の罪を誰よりも知っています。
私は多くの人を騙しすごし、誰も彼もを傷つけて生きているのです。
それは紛れもない事実なのに誰も気づきません。

いえ、彼だけは私の罪に気づいていました。

それでも、彼は私の罪を信じたくなかったのです。
彼の中の私はいつまでもすばらしく、彼の心はそれを信じることで安らぎを得ていました。
現実を見ることができないこと、それ故に与えられる苦しみを彼は甘んじて受けていました。
私はなんと愚かなことと彼を嘲笑いました。