ツナミの女/80S青春群像『ヒートフルーツ』豪女外伝/津波祥子バージョン編【完結】

その29
バグジー



体中が痛い、息も苦しい…

またも冷たい地面に頬がくっついちまった

正直、このまま寝ちまいたい気分だ


...



最初の空手の構えで惑わされた

どんな攻撃で来るかが、すぐにはつかめなかったんだ

その迷いから、頭とかだらが連動しなかった

ヤツの飛び蹴りは誘い水だったんだろう

通り一遍の防御を読み込んで、即、例のラッシュ攻撃を仕掛けてきやがった

態勢が十分整わない時点で、まともに来たからたまらない

オレとしたことが、2度も喰らうなんてな

不覚だった…


...




なにしろ、凄まじい打撃コンビネーションと言わざるを得ない

文字通り嵐のようだった

津波の蹴りとパンチは重い

とても女のそれとは思えない

デカい体だけに、パワーがあるのはそれなりに想定していたが…

その威力は、私の予想をはるかに超えていた


...



津波が仲間から空手の指導を受けていたことは承知済だった

ヤツは短期間で、腰を利かせた打ち込みを会得したんだろう

その結果、おそらくは本人も気が付かないうちに、従来のケンカ流パンチとキックの破壊力に重みが増したのかもしれない

まるで、へそを軸にして打ってくるように見えたしな

しかも、スピードもあるし、とりわけ技と技の間が短い

一度目の攻撃を受けたダメージも重なり、正直、なされるままだった



...



地面に這いつくばっている私の目線の先には、”仲間”の脚がいくつも見える

ややかすんでいるが、明らかに女の脚が正面にある

そこから声が俺に向かって、さかんに届いてくる

”柴崎さん、負けないで!お願いだから、立ち上がって!”

どうやら嗚咽してるような甲高い声だった

三島の声か…

クソッ!

寝てる場合じゃねえってことだな…


...



私は力を振り絞り、体を起こした

まさに必死だった

まずは片膝をついて一呼吸とるぞ

だが、既にカウントは7まで入っていた

バランスを崩し、ここで倒れちまったら終わりだ

あせるな…、落ち着くんだ…

私はそう自分に言い聞かせ、慎重に膝を地面から離した

体はふらついて、鉛のように重い

両足で踏ん張り、何とかカウント9でファイティングポーズをとったぞ!

津波よ、勝負はこれからだ

まだまだだ…