ツナミの女/80S青春群像『ヒートフルーツ』豪女外伝/津波祥子バージョン編【完結】

その24
夏美



「ダウンです!」

ケイコの大きな声が響いた

なんと、津波祥子が最初にダウンを奪ったぞ!

”うぉー!やったー”

”凄げー!凄げーよ、祥子ー”

もうこっちの陣はまるで勝利したかのように、みんな興奮状態だ

私のすぐそばの北田久美と新村静美なんか、二人で抱き合って、跳ね上がってるし(笑)

とは言え、この私も隣の南部さんだって、瞳孔開いてテンション全開よ


...



「鷹美、どうなの?」

「ええ…、かなり効いてるようですが、これで終わりはないですよ。さすがに」

私のすぐ前にいる、今回祥子のコーチ役を引き受けてくれた矢吹鷹美には、せっつくように見解を尋ねてみたが、さすがに彼女は冷静そのものだった

そして…

「祥子ー!」

野球応援でおなじみのメガホンを手にしている鷹美は、それで祥子に声をかけ、右手をまっすぐ掲げて何やらサインを送ってる

親指を下に指して、よくヒッチハイクで使うアクションだ

ああ、そうか!

なるほどね…


...



「…相手のバグジーは、10カウント・ダウンルールを何度か経験しているはずなんです。ならば、ダウンカウントをダメージ回復の時間に当てる術も心得てますよ。なら、祥子も休んどかないと…」

鷹美の合図を受け、祥子は反腰の態勢になって息を整えているようだわ

「…、今のラッシュ攻撃、いいんですが…、ちょっと早かったかもです。序盤のペース配分は上々だっただけに、温存したスタミナをここで一気に使って、この後、それがどう出るか…」

「…うーん、津波祥子の持久力アップは確かに心強いが、要はその配分を間違えることが、最後の勝負を大きく左右するという訳だ…」

「はい、南部さん…」

私の左隣では、盛んに頷いていた南部さんが鷹美の”解説”に納得の様子だ


...



結局、最初のダウンでは、サブジャッジ二人のカウント9ギリギリのところで相手が起き上がった

こっち陣営では、あとワンカウントというところだったので、タメ息を伴ったざわめきと歓声で耳がつん裂かれるくらい、騒然としてるわ

その直後…

「相川先輩!」

私は後ろからの声の主を振り返った

「…一応、ひと回りしてきましたよ」

湯本敦子だ…

それに南部さんの弟、テツヤ君もね


...



「ご苦労様、あっこ。それにテツヤ君も。それで、どう?異常はないかしら…」

「ええ、今のところ、中間後方と最後方でかなりの人数つけて整理、監視してますけど、特段の混乱はないってとこです。ただ…」

「何…?」

「あのう…、一般のギャラリーに交じってる中に、やっぱりいそうです、”連中”らしきってのが…。それと、明らかにって人達も…。ねえ、テツヤ君」

「そうっすね。僕らの見立て、まるでトンチンカンってことないと思いますよ…」

そういうことね…

ならば、気は抜けないか…

この対決をぶち壊されることだってあり得るし…

なにしろ、そんなことは絶対させられない

それだけは…