ツナミの女/80S青春群像『ヒートフルーツ』豪女外伝/津波祥子バージョン編【完結】

その14
津波祥子の決断~紅丸有紀との国際電話で交わされた秘話③
祥子


「私はね…、横田家とは家族ぐるみで、ずっとお付き合いさせてもらってたからさ…。ケイちゃんのご両親は、まことにしっかりさせれた方達だよ。妹の美咲ちゃんも、お姉ちゃんを小さい時から尊敬していた」

そうだったんだな…

この人はおけいだけではなく、横田家の全員と家族ぐるみで親交が深かったんだわ

要は、今の言はその上でってことだよ

うん、説得力が違う…

...


「…私は肝心な時、海外で知らんふりしてたんだ。今更、何も口を挟さむ資格などないが…、今回の3人の周辺事情はまさに様々、複雑に絡みあってるんだろうよ。それを横田さんはさ、漠然とでも承知されてると思うんだ。そして、あのご夫婦はケイちゃんのことを心底信頼してた。心の奥底からだったんだよ、津波さん…」

既に私は鳥肌を立てて、太平洋を隔てた彼方から耳に届く紅丸さんの話に夢ごこちとなっていた…

「それと…、会ったことはなかったが本郷麻衣だってなあ…。何でも母子家庭の一人っ子だったと聞くよ。そのお母さんにもな…、是非とも、一人娘の誇りは私らが進呈しないことにはよう…。ふう…、これが手前勝手な解釈でないことを願うばかりだが…」

私もですよ、紅丸さん…

今の生の声、真樹子さんや久美や静美にしっかと伝えますから…

...


「…いずれ時が経てば、司法の手以外で、今回の”関連”に何らかの裁断が下されると思う。少なくともキミたち都県境に住んでる者には伝わるさ。このまま立ち消えることはないと見てる」

「じゃあ私らは、麻衣やおけいが命を失ったことに、今後も対峙していくと…」

「そうなるよ。いつの日かキミらが耳目にすることは、善悪では計れることじゃあないかもしれない。でもその顛末をさ、然るべき人間の手で、あの世に行った彼女らの尊厳を以ってってことで頼みたい」

「…」

...


「…合同集会でのセレモニーは、来るべき日、”それ”を受け止めるキミらにとって、その時の下地となるんだ。…やるせない気持ちはあるだろうが、津波さん、キミの決断は間違ってない。私はそう信じる」

「わかりました!紅丸さん…、それでは都県境の各集団を結集して、南玉連合主催による麻衣とおけいへの”殉職”を採決します。そして、それを共同宣言とする追悼セレモニーは開催しますよ!」

「ああ。頼むわ、津波さん。はは…、日本に戻った時は声掛けるからよう、そん時は一献交わそうや。なあ、大将」

「ええ、お待ちしてますよ、紅丸さん…」

...


かくして、伝説の怪物との国際電話によって、私は決断した

私は現南玉連合総長として、横田競子と本郷麻衣の”殉職”宣言をもって、都県境の猛女達には、若くしてこの世を逝った仲間たちと向き合う姿勢を導く…





ツナミの女
ー完ー