ツナミの女/80S青春群像『ヒートフルーツ』豪女外伝/津波祥子バージョン編【完結】

その13
津波祥子の決断~紅丸有紀との国際電話で交わされた秘話②
祥子



「あのう…、提案者がこういう言い方も何なんですが…、本当にこの主旨で集会を催していいんでしょうかね?やはり、どこか躊躇の気持ちは消せなくて…」

「それは、ケイちゃんの家族の気持ちとかを察してってことかな?」

「そうです。私たちがやろとしてることは、返って残された家族を苦しめることにならないかと…。どうしても、それは頭に浮かんでしまって…」

「うん、わかる。でもさ、残された家族もさ、これからいやでもいろんなことが耳に入るよ。これは避けられない…」

ふう…、いきなり何とも凄い一言を見舞ったな

さすが伝説の怪物だよ…


...


「…何しろだ、本郷も含め、あの3人は勇気ある生き様を貫いたんだよ。少なくとも。…この世を去った結果が事故か殺害かということを、我々が超越させること…、それこそが大切だと思うんだ」

「…」

私は言葉が出なかった…

もろ、事故か殺害かって…

この人はすべてを読み切っていて、その上でこの言葉なのか…!


...


そして私は、海の向こうからの怪物が放ち続ける言葉に、驚嘆の連続打を浴びせられる…

「だから”殉職”として、仲間がその認識を共に刻む。ここを第一歩とする…。このキミの考えは誠実だと思うんだ」

この私に誠実なんて言葉…

この人からかよ…!

...


「…その証となる場を合同集会で踏めば、そのまま都県境の界隈はその意識で定まるよ。ここで、後世にも伝承していく土台が築かれたことになるんだ」

「それ…、”彼女ら”にとって、意義あることだと信じてるんですね、あなた方も…?」

「ああ。ぜひ、早急にその場をキミたちの主導で実現してほしい。紅組一同はその一念でってことで捉えてくれていい」

紅丸さんは、まるで迷いがないような口ぶりだった

だが、実際はそんなことないんだろう

この人だって…

それでもだ、”これ”が矢継ぎ早に人の心へとこんな言葉を伝えられるって…

凄いわ、ホント…

...


「…これはさ、3人の名誉と尊厳を多くの人が胸に刻み続けて、生きていくということになるんだ。津波さん、私はね…、家族にとって、それは大きく捉えれば誇りになるものだと私は思うよ」

誇り…!

私がやろうとしていることは、家族を苦しめるんではなく、失った娘への誇りを得ることだって言うのか…⁉

「紅丸さん…」

私はこれ以上の言葉が出なかった

単刀直入に、こうまでかなのよ…

この人にかかっては…