ツナミの女/80S青春群像『ヒートフルーツ』豪女外伝/津波祥子バージョン編【完結】

その14
リエ


”ブブブーン!ブブブ、ブブーン…!”

午後3時半を回ったところで、バイクのエンジン音がこっちに向かってる

どうやら1台のようだわ

で、マシンの主は私らの仲間らしいわね

...

”ブブブーン!ブブブブ…”

彼女は、私の正面1M手前で止まり、すぐにメットを取ったわ

「迫田先輩‼…本日はお役目、ご苦労様です!早速なんですが…、ああ、私は…、あのう…、祥子さんから…」

アハハハ…

どうやら今日の使者はレッド・ドッグのヘッド、新村さんだわ

なんか、相変わらずねえ…

熱意と一途な気持ちはわかるんだけど…

もう立場もあるんだから、汗かきかきで焦りまくりのドタバタ感は脱ぎ去って、もっとどしっと構えて欲しいところなんだよなー

私的にはね…、あえて辛口でこの子にはそれを望んでる

でもまあ、祥子からの話も聞いてるからなあ

”そこ”は、彼女の芯と捉えるべきなんだろうね

であれば、そこを生かしたフォローが私らには求められるわね

...

「新村さん、端的に行きましょう。今日のジャッカル・ワンは、あなたと祥子が張り番よね。そのあなたが息を荒げ、”その体”でここへってことなら、コトは火の手が上がった…。そういうことね?」

アハハ…、そうは言っても私、けしかけ調でしか発信できないんだよな(苦笑)

実際、律儀でバカ正直な新村さん…、早くもカタまってるわ

ダメでしょ、南玉の特攻部隊を率いるリーダーが、協力勢力の一員に過ぎない私ごとぎのカマかけでオドオドしちゃあさ

「あ…、はい…。なので、私は祥子さんに言いつかって…」

「わかった。ならさ、片桐さんのハードレッズからは私が全任もらってるんで。即ジャッカル・ワンに向かうわ。その前に並行宣戦を張ってる墨東会の積田さんにそこの公衆から今、連絡するから」

「ハイ‼ありがとうございます…!」

全く…

この子、ドンくさいけどドッグスのトップに就いてもここまで健気って、誰にでもまねできないよ…

北田久美も、”いいライバル”を持ったもんだわね(苦笑)

...


「…新村さん、積田さんは部隊をとりあえず待機させて、単身、ワンに向かったわ。私達も急ぎましょう!」

「えっ?…じゃあ、迫田さんも積田さんも自ら、祥子さんの下に駆け付けてくれるんですか?」

「当たり前でしょ!何言ってんのよ、あなた…」

ああ…、ここではヘンな説教はやめとこう…

「はは…、なにしろさ、今日は敵さんも麻衣の”本殴り込み”を受けてのリアクションなんだからさ…。こっちも主だったモンは自らで総結集しないとね。いい…?今日はあなた方南玉が軸なんだから、その頂点に就く津波祥子の最側近にある新村さんはさあ、むしろ私らに檄を飛ばすくらいじゃないとダメなのよ。わかってる、あなた…」

あらら…、いつの間にやらしっかり説教してるわ、私(爆笑)

「すいません…、あの、私…」

わー、俯いちゃったよ、この子…

こりゃ、まずいわよね

...

「新村さん‼私の言葉は後でじっくりかみ砕けばいいって。さあ、祥子が待ってるよ、行こう!」

「ハイ‼」

祥子…、今行くぞ!

私は、あの黒沼高襲撃時以来、一年ぶりに芯の底から滾り猛ってエンジンをふかしていた