ツナミの女/80S青春群像『ヒートフルーツ』豪女外伝/津波祥子バージョン編【完結】

その59
バグジー



今日は二つのアイテムを手に入れた

デュポンのライターと逆髪神社のお守り…

それらをテーブルに置いて、床に胡坐をかいた私は腹式呼吸を繰り返している

就寝前の静かなひと時だ

それにしても砂垣め、今日はあんな伝言を押し付けやがって…


...



「…ふーん。今の話を砂ちゃん、直に話せないからってね…。別に何てことはないのにね。まあ、かわいいとこ、あるじゃん。はは…」

「…」

本郷麻衣とは、話すたび、つくづく驚かせされる

そして、今、確信が持てた

コイツはその一瞬、一瞬をまさしく生ききっていると…

常に正直な自分ととことん向き合い、その結果、基本として迷いはない

とどのつまり、後悔とは無縁な生き方で毎日を全うできてる

だが、市井の常人に言わせれば、そこに自己を持って行くには、自分を極限に追い込み続けることに等しい

たかだか17にして、確たる死生観に到達しているなんてな

信じられん…


...



「一応、聞かせてくれ。お前…死ぬことが怖くないんだな?」

「怖いよ…。けど、恐れはしない」

「なるほどな…。そういうことなら、ついでに言っておいた方がいいな。…お前の先輩とやらも言い当てていたが、大打は関東のやくざと特殊なパートナーシップをシュミレーションしている。それでだ、すでにヒットマンのスカウトにも動いている。承知しているか?」

「いや。まあ、行く行くはやくざ組織から、殺しも請け負うってオプションも厭わないだろうって、そんな程度では先輩から聞いたけど…」

「日本全土だ。人伝手で網を張って、これはという人物には大打が直接出向く。私の場合は、横浜にいる時に会いに来た」

「…じゃあ、バグっちは”そういうこと”で、ヤツと知り合った訳?」

「そうだ。私の仲間を通じて接触してきたんだ。それで、腕だけでなく、私の非情さを買ってくれてな。実際はあっちの勘違いもあったようだが、ふふ…」

「そうだね。アンタは、非情っていっても、質がちょっと違うよな(笑)。でも、誘われたのか?殺し屋で…」

「当然、そのものズバリではない。仮定の話を反復させ、こっちの許容度を推し量ってきたな。じっと目を見ながら…。途中で”察した”んで、こっちからNGを出した。それもあくまで、抽象的なシグナルでの会話だったが」

麻衣は興味深そうに、私の顔を鋭い視線で見つめながら、黙って聞いていたわ






「…ヤツの言い回しはこうだった。女を平気で殴る蹴るらしいが、仮に未成年の娘を始末するところまでだと、主義に反するのかって…。その時、何気なくこっちからもカマかけたよ。実際にOKと言ったら、その”対象”、即待機してるのかとな…」

「…そんで、対象のアテはあるって言ったのか?」

コイツ、この時点で、もう読んでいたのかもな

私はあえて、話した


...



「それらしい反応で返してきた。…これな、あくまで私の推測だが、その”対象候補”…、お前のことを想定してたんじゃないかとな…。まあ、今、こうしてお前とかにも出会って、こういう経緯をこの地で踏んで、いろんな状況を紡ぎ合わせてみると、どうもな…。それで、最近もしかしたらってよう」

「まあ、的外れではないでしょ。仮定としては、つじつまも合うしね」

麻衣は決して、動揺はしていなかったと思う

だが、そう語るあの子の顔つきは、ちょっとこわばっていたようにも感じた


...



私の話は、未成年の娘に告げるにはあまりに残酷すぎる

しかし、麻衣には知っていて告げないことの方が、かえって酷い行為に思えたんだ

あの子は例え、わが身の命に危険な状況が迫っていようとも、冷静に捉えるだろうよ

そして、すべきことに考え至れば、それを果敢にやり抜く、毅然とした意志を持ち合わせている