ツナミの女/80S青春群像『ヒートフルーツ』豪女外伝/津波祥子バージョン編【完結】

その49
砂垣



「…当の相和会にとっては、権力側との関係を継続することは絶対譲れないし、広域組織もその牙城が崩せないのは十分承知してる。だから、東西双方は長期的視野で、相和会のテリトリーに唾をつけておくことが重要だってことになるんだよ。一方、そこを相和会は巧みに利用してるよ。さっそく西との親密路線を打ち出してさ」

「ここで、さっきの話に繋がる訳ですね?」

横田が相槌を挟んできた

この子、俺の話をどんどん引き出すような口ぶりなんだよな


...



「うん…。これはさ、相馬さんが亡くなったと同時に、星流会が”揺さぶり”を強めてきてることを見極めての上だよ。当然、後ろで東龍会の意志が働いていることも見切っていた。ふふ、矢島さんと剣崎さんは、ひょっとすると、長年利害関係を有してきた星流会を潰す気なのかもな…」

諸星さんは相馬さんがある意味、保護していたんだ

その理由は特になく、気紛れだったのかもな

諸星さんは在日系で、終戦後は朝鮮○落を基盤に細々としのぎを得ていたらしんだ

相馬さんはその諸星さんを放置、黙認の姿勢だったが、高度成長期を経て、星流会の収益源も膨らんでいった

業界ではいち早く関東直系の東龍会傘下に加わり、広域組織の二次団体の地位を獲得した訳だ


...



ところがその結果、星流会は収益地盤の地理的要因から、相和会を関東傘下に組込む攻略の先兵の役目を負うことになったんだ

もともと諸星さんを在日上がりと侮蔑視していた相和会の幹部達は、相馬さんへことある毎に、寄らば大樹の何とやらむき出しの星流会など潰すべしと、進言をぶつけていたそうだわ

関東ははっきり言って、星流会は使い捨て覚悟だったんで、盛んに諸星さんに相和会への挑発を強要してきた

結果、双方の小競り合いは絶えなかったが、肝心なところではいつも相和会が星流会を押し返していた

でも、潰すところまでは至らなかったと…

それは明らかに相馬会長の意向があって、他ならぬ諸星さんもそれを十分承知していたよ

従って…、諸星さんとしても、相馬さんが亡くなったとなれば、今後星流会に対しては、強硬姿勢に転換してくることへの対応を迫られたってことさ

だから警戒心が働いて、今回の大胆な挑発行為に出た面はあると思う

諸星さんも、相馬さんが他界したこの好機を親筋たる東龍会がうかうか見過ごすことなどないのを見定め、どの道対相和会の先遣役を命じられるなら、バックの本気度をいっそ目いっぱい引き出しておこうとね

そうすりゃ、自分への力の入れ方も違うと読んだはずさ

これすなわち、自らの身を守る保険につながる訳だしな

それに…、東龍会とてこの際、更なる野望の布石を打つ機会にも据えたってのが実のところだと思う

そして相和会は”それ”を見越していた…