ほっぺが熱を帯びているのをひしひしと感じ、それが妙に気を狂わせた。
今はまだ、恋はしない。
そう決めたはずなのに。
その決心が揺らぎ始めていることに気づき、不安が一気に押し寄せた。
ああ、なんでよりによって都稀君なのか。
スペックも"容姿"も優秀な都稀君。
どう考えても絆されているではないか。
まっすぐに伝えてくれる愛。
強引だけど優しい言葉や行動。
幸せだとはにかむ笑顔。
正直言って、惚れない方が無理だろう。
まだ知り合って2日なのに。
恋にーーー落ちてしまった。
通報していいレベルの変態疑惑があるのに。
なんでかな、好きになってたんだよなあ。

でもーーきっと私には、一歩を踏み出す勇気は持てない。
好きだなんて、伝えることは出来ない。
もし、付き合って恋人になれば、別れという選択肢が増えてしまうから。
臆病な私はまだ過去に、囚われている。

「ねえ、都稀君。」
私を撫でている都稀君に声をかける。
「ごめんね。」
「え?」
急に謝った私にキョトンとした顔になる都稀君。ふふ、可愛い。
「どうしたの?」
そんなに心配そうな顔しないで。
君には笑顔が似合ってるから。
「んーん。なんでもない。」
誤魔化そう、私の気持ちでさえも。
「(ボソッ)好きだなあ……。」
小声で言った私の呟きは、空気に溶けて、誰にも聞かれぬまま消えていった。