「おはよっ、のーのっ!」
「おはよー。」
まだ覚めきっていない目を擦りながら、私、此花のの(コノハナノノ)は朝から元気な親友に挨拶を返した。
と、そこでふと教室の女子が浮き立っているのに気づいた。
「ねえ、何かあったの?」
同じく浮き立っている親友、蝶野芽琴(チョウノメコ)通称めーに聞いてみると、
「え~っ、!?のの知らないの?今日は都稀冬馬(トマレトウマ)君が登校してくる日なんだよ!」
都稀冬馬。この学校の有名人。容姿端麗で文武両道、そして何故か学校への登校が免除されているまさに完璧男子。
「あー、そういうことね。納得納得。」
「うわー興味無さすぎでしょ。まあ、ののだしねー。」
「仕方ないじゃん。男は顔じゃないんだよ。」
そう、顔じゃないのだ。顔が良くたって、良いことなんて何にもない。むしろ、生むのは悲劇ばかりだ。
愛があればどんな困難も乗り越えられるっていうけど、そんなの迷信だ。
愛があっても、耐えられないことくらいはある。
「ま、そうなんだけどさー。うーむむ。でもでも、やっぱり顔も大事!!」
あはは、めーは面食いだからなあ。
「見るのはタダなんだし、昼休みに見に行こうよ。ね、いいでしょ、お願いっ!」
「んー、しょうがないなあ。」
「のの大好きっ、ありがとう!!帰りにクレープ奢っちゃう!」
「それ、約束だからね?」
「あ…、も、もちろんですともっ!」
「ふふふ。」
楽しそうに笑った私を見て顔をひきつらせているめーは、ちょっと可愛い。
「その…加減…、してね?」
「ふふっ、どうしよっかな~。」
「いやー、やめて~!!」
やっぱり可愛い。
しょうがないから、クレープは十個で我慢してあげよう。