「あった。3本目」

木に引っかかったバラを軽々手に取る啓吾くんに対して、私はまだ0。

「どーしたの? 具合悪い?」

私の首元にそっと触れる啓吾くんの手は、温かくて。

なにかが溢れそうになった。


「…あ」

視界に映る啓吾くんの向こう。花壇の中に美しく咲くのは、私が探していたバラだ。

やっと見つけた…! 思わず笑顔になって、バラのもとに駆け寄る。

「啓吾くんっ、あった!」

バラを見せると、啓吾くんも笑顔になって、私の横にしゃがんだ。

「ここら辺まだありそうだね」

やけに一生懸命バラを探す啓吾くん。花壇の中を隅々まで探す。

キョロキョロ見渡している姿は、なんだか可愛くて。

「あ、ほら」


花壇からもう1本バラを抜いた啓吾くんは、優しく微笑んだ。

その時、溜め込んでいた想いが、全部溢れた。


「…好き」


私の笑顔と真逆に、啓吾くんの笑顔が消える。

同時に、私も驚いた。


今、好きって言った?


自分で自分の気持ちにびっくりしたあと、そうか、この気持ちは好きって気持ちなんだとやけに納得した。

啓吾くんは、驚いた表情をした後、目を逸らしてうつむいて、

そして、うーん、と唸ったあと、瞳だけをこちらに向けた。

「ありがと」


ありがとう、って、もしかして…。

「そ、それは…」

「愛美ちゃんさ、俺と本気で恋できるの?」

いつもの、柔らかな笑顔じゃなかった。真剣な目。


啓吾くんと、本気で恋をする。

他の女の子と遊んでばかりだし、ペアの私も、ただの女の子のうちの1人にすぎない。

彼女になれたとしても、啓吾くんは私を特別視できない、ということだろうか…。


啓吾くんの優しいところが好き。

でも、もしもその優しいところよりも、他の女の子とばかり話すところが大きくなってしまったら…?

それを受け入れられるのかな。