啓吾くんとペアになってずいぶん経った。

もう季節は秋。

体育祭も文化祭も、啓吾くんと距離が縮まることはなく。

いい意味でも悪い意味でも、目立ったことは出来なかった。


今日はまっすぐ部屋へ帰ってくれるかな。

放課後、少しの期待と半ば諦めの気持ちで、啓吾くんに話しかけようとした時。


「ハァイ生徒のみんな!突然だけど、今日11月22日は何の日か知ってる?」

先生の見せる画面に映るのは、七海夫婦。

「そう! 今日は11(いい)22(ふうふ)の日! それにちなんで軽いボーナスゲームを用意したわ」

ボーナスゲーム!

大きな行事はなかなかポイントをもらえないから、こういう時に稼いでおかないと!


「題して『学び舎に咲く愛をみつけて』ゲーム‼︎」

素敵なタイトル。何かを探すのだろうか。

「108本のバラの花束は“プロポーズ”という意味があると言われているの。だからその108本のバラの花をこの学園中に隠したわ。みんなはそれを見つけてね」


バラ…?!

あの日の思い出が、フラッシュバックする。


「愛美ちゃん、行くよ」

すでに他のクラスメイトは、バラを探しに行ってしまった。啓吾くんが私を呼んでる。

「う、うん」


いつもの笑顔は消えていた。

嫌な思い出が、頭の中をずっとよぎる。

大きなバラの花束を抱えて立ちすくんだ、あの冬の日。

もう、傷つきたくないのに…!