「愛美ちゃん」

入学式が終わって声をかけられ、私は笑顔で振り向いた。

「啓吾く…」

が、喜びもつかの間。

啓吾くんの隣りにいるのは、クラスメイトの女の子。


「晩ごはん、梓ちゃんと学食で食べてくるね」

「え」


入学初日。一緒に過ごす最初の夜のプランは、すでに頭の中で考えていた。

でも…重い、よね。

初っ端嫌われちゃいけない。そう思って、私は取り柄の笑顔を貼り付けて言った。

「分かった。いってらっしゃい」

2人の仲よさげな雰囲気を1人で突っ立って眺めていたらあの日を思い出してしまって、足早に寮へ戻る。


「運命の恋、のはず」

大丈夫、大丈夫と言い聞かせながら、啓吾くんの帰りを待たずに、眠りについてしまった。