「ぶはっ、なにそれ」

「笑わないでよ、真剣なんだから」

といいつつ、私もだいぶ笑っちゃってる。


「愛美ってピュアっ子なんだね。その初恋の話、めっちゃかわいい」

半分からかいで言っているであろうその言葉に、私はわざとらしく口を尖らせてそっぽ向いた。



「ねぇ、今日はなんの日か知ってる?」

啓吾くんの質問に少し首を捻らせて、分かんない、と答えた。

彼はいつもの優しい笑顔で、私の頬に手を添える。

「11月25日。25は二コってことで、11(いい)25(えがお)の日だよ。笑顔の素敵な愛美にぴったり」


照れて、せっかく作った怒り顔も、気づけば笑顔になっていた。

「へへ、ありがと。…ね、あれ」

向かいのベンチの下に、なにやら見覚えのあるものが。


「バラ」


回収され忘れたのだろう、『学び舎に咲く愛をみつけて』ゲームのバラが落ちていた。

それを拾って、啓吾くんに見せた。

すると啓吾くんは、何かを思い出して私にもう一つ質問をした。


「じゃあ、俺がこの学び舎でみつけたものはなんでしょう」

きっと啓吾くんのことだから、と、深く考えてしまった。

「なんだろ…学び舎でみつけた、だから、あのゲームのバラ?」

すると啓吾くんはニヤリと笑って、私のバラを持つ手を上から大きな手で包み込んだ。


「バラはね、愛と美の象徴なんだよ。…まだ分かんない?」


「…分かった」


真っ赤になった私を、啓吾くんはかつてないほど、優しく、でも力強く、抱きしめた。



健やかなるときも、病めるときも、

互いに敬い、幸せを分かち合うことを

ここに誓います。



「ここで、愛美をみつけて、良かった」