「え…なにこれ」


大好きな人が転校することになった、中3の冬。

想いを伝えたくて渡した、100本のバラ。


息を深く吸って、渾身の笑顔で言った。

「一目惚れでした! 転校するの本当に悲しくて…」

「いや…重すぎ。意味分からんし。…津田って、変わってんね」

彼は私の持っている大きな花束から、真っ赤なバラを1本抜き取る。

「1本だけもらうね。ある意味忘れらんないわ、津田のこと。じゃあ…ありがと」

そして、私の横を躊躇いもなく通り過ぎていった。



冷たい風が、99本のバラを美しく揺らす。

それとは反対に、儚く散った私の初恋。

入学式で一目惚れした。運命かと思った。

重たいバラをひこづりながら家路を辿って家に帰る。

お母さんの、おかえり、という声に混じって、魅力的な言葉が聞こえた。


「あの世界的大企業セブンオーシャンが私立高校を創立することを発表! 開発中であるマッチングAIシステム“デステニー”の実験を兼ねていて、運命の相手を見つけ結婚を目指すという…」


もし、これが運命の人と出会える学校なら。



「お母さん! 私…七海学園に通いたい!」

すぐさま路線変更。運命の出会いのために猛勉強。そして…


「1198、1198…。っ、あ、あった…!」


待っててね、運命の人。


2度目の恋、もう絶対に失敗しない!