それが少し寂しいと思うが。

寂しいだけじゃなく、デビュー出来たからと、嬉しい結果が(ともな)えばきっと笑って語れるだろう。


その為に──。


名刺をくれた東マネジャーに認めて貰えるよう、頑張らないとな。



「さよなら、僕らの青春

始まる、僕らの青春」



ベースの揺らいだ音が響き、少しずつ掻き消えて静かになる。



「……一年しか経ってないけど、懐かしいわね」


「だな。初めてこれ弾いた時思い出した」


「演奏に集中してて、それどころじゃない……」


「あはは!帰り道で聴くんだな!」



少し染み染みとした部分がそれぞれあったのか、帰りの支度はいつもより大人しく片付けをしていた。


部屋から出る前に、明後日の確認をしてから家を出ると、俺と馨は駅の方へ、凛花は近くの小さなマンションへと帰って行った。