「妃奈?」


「ダメ。」


「え?」


「凪くん、先約があったんだったらちゃんと行かないと……ダメだよ…」


凪くん、今日すごくかっこいいもん。それって、本邸に行くためにしたものでしょう?


それなのに行かないなんてもったいないよ、、それに……


「私が逆の立場で……急に行かないって言われたら……ちょっと嫌だな…」


「っ、」


私の耳元で凪くんが息を飲む。


「……ごめん」


「あ、私も!ごめんね」


私のお腹辺りにまわされた凪くんの腕を軽く握って謝る。


すると、凪くんは私をくるっと回転させて、向き合う形を作った。


「ん?」


なんだろう、と首を傾げてみせる。


何かを言おうとしている凪くんの表情。


…でも、何を言いたいのか全く予想できない。


「凪く…」




───「妃奈、一緒に本邸に行こう。」