そしてそのまま、真っ直ぐに私の方へ歩いてくる。


「あんたね、凪くんに近づいてるのは」


「え、、」


人を睨んでいても崩れることのない可愛さをもつ女の子。


この子も凪くんのことが大好きなんだ…


「あーあ、凪くんも可哀想!あんたと凪くんじゃ釣り…」




──彼女の言葉が途中で途切れたのは、私の耳を凪くんが塞いだからだった。


花乃さんの口の動きが止まったところで凪くんは私の耳から手を離す。



「本当に懲りないな」



凪くんのその言葉は多分花乃さんに向けられた。


酷く冷めきっていて1オクターブほど声が低い気がする。



「妃奈はこんな言葉聞かなくていい」



でもそのあと私に、優しい視線と声を向けてくれた。


だけど、それを花乃さんが黙って見ているはずもなく……


「なんでなんで凪くん!!なんであなたがそんな女に触れるの!?」


彼女は泣きながら叫び、地団駄を踏む。