優しいのは妃奈の方だと思うけどな。


「返事、ちゃんとするので待っていてください…」


「ん、」


……やっぱり妃奈は笑っているのが似合う。


妃奈が当たり前のように笑って、幸せでいられるなら…隣が俺じゃなくてもいい。


「まぁ、まだ諦める気はねぇけど」


「ん?」


ベンチから立ち上がって、妃奈の方に手を伸ばす。


「お腹空いただろ?何食べたい?」


「えーっと、グラタン……とか?」


「グラタンね、りょーかい」


『ありがとう』と屈折のない笑顔を浮かべてから俺の隣にやってくる大好きな子。


「舜くんは何グラタンが好きー?」


「んー、えびのやつ」


「あ!同じだ!」


なんの障害もなく彼女と過ごせることがなによりも特別で、他の何かに負けることなんてない。




なぁ妃奈、こんな男でごめん。


気づいてんのに、それをお前に言わないのは俺が酷いやつだからだよ。