近い将来、妃奈は東雲グループやその業界と関わることになる。


そしてきっと多くの人の嫉妬を買う。


それは上に立つ者の使命であり、受け入れないといけないのかもしれない。


それでも俺は妃奈をそんな醜い感情から遠ざけて、ただただ大切に十分すぎるほどの愛を贈りたい。


そのためにはまず俺が耐えないといけないんだ。


どんなに妃奈が可愛すぎても…




「凪くーん？保冷剤なかったー？」


いつもの愛おしい声がリビングから聞こえて一気に緊張感が解かれた。


「いや、あったよ」


そう返事をしながら妃奈の元へ戻ると、妃奈は保冷剤と湿布を差し出す俺を見て、嬉しそうに口角を上げた。


「取ってきてくれてありがとう」


「どういたしまして」


「湿布はあとで変えるとして、保冷剤だけあてておこうか。」


俺の言葉に妃奈が頷くのを確認してから、ゆっくりと患部へ保冷剤をあてた。


「凪くんは本当に優しいね」


優しい、と他の誰でもない『妃奈』に言って貰えたことが嬉しくて、俺はまた妃奈の頭に手を乗せた。


彼女が顔を真っ赤にさせるのを理解した上で…