***
「礼音、ちょっとこっちへ来て座りなさい」
リビングへ行くと、父さんに呼ばれた。
「なに?」
俺が父さんの正面に座ると、俺に見えるようにして父さんが自分のスマホを置いた。
「……!」
これ、この前鮎川さんに撮られたヤツだ。
まさかSNSにアップしていたなんて。
「うちの社員が教えてくれたよ。いっしょに写っているのは、写真共有アプリで有名な娘らしいじゃないか。いったいどういう関係だ。おまえには――」
「『許嫁がいるのに、なにやってるんだ』って言いたいんでしょ? でも俺は、そんな昔一度会ったきりの相手と結婚するつもりないから」
「っ……おまえ、この娘と付き合ってるとでも言うつもりか?」
「だったら、なに? 婚約を破棄されて困るのは、父さんだけだろ。俺はべつに……」
その瞬間、頬に熱い痛みが走った。
「うちの社の全社員の生活がかかっているんだぞ。なにを勝手なことを!」
「勝手なのは父さんの方だ。そんな会社……もう潰れればいい」
俺はぎりっと奥歯をかみしめると、静かに立ちあがってリビングを出た。
「礼音、ちょっとこっちへ来て座りなさい」
リビングへ行くと、父さんに呼ばれた。
「なに?」
俺が父さんの正面に座ると、俺に見えるようにして父さんが自分のスマホを置いた。
「……!」
これ、この前鮎川さんに撮られたヤツだ。
まさかSNSにアップしていたなんて。
「うちの社員が教えてくれたよ。いっしょに写っているのは、写真共有アプリで有名な娘らしいじゃないか。いったいどういう関係だ。おまえには――」
「『許嫁がいるのに、なにやってるんだ』って言いたいんでしょ? でも俺は、そんな昔一度会ったきりの相手と結婚するつもりないから」
「っ……おまえ、この娘と付き合ってるとでも言うつもりか?」
「だったら、なに? 婚約を破棄されて困るのは、父さんだけだろ。俺はべつに……」
その瞬間、頬に熱い痛みが走った。
「うちの社の全社員の生活がかかっているんだぞ。なにを勝手なことを!」
「勝手なのは父さんの方だ。そんな会社……もう潰れればいい」
俺はぎりっと奥歯をかみしめると、静かに立ちあがってリビングを出た。



