いつまでも変わらぬ君でいて

   ***


「礼音、ちょっとこっちへ来て座りなさい」

 リビングへ行くと、父さんに呼ばれた。

「なに?」

 俺が父さんの正面に座ると、俺に見えるようにして父さんが自分のスマホを置いた。

「……!」

 これ、この前鮎川さんに撮られたヤツだ。

 まさかSNSにアップしていたなんて。


「うちの社員が教えてくれたよ。いっしょに写っているのは、写真共有アプリで有名な娘らしいじゃないか。いったいどういう関係だ。おまえには――」

「『許嫁がいるのに、なにやってるんだ』って言いたいんでしょ? でも俺は、そんな昔一度会ったきりの相手と結婚するつもりないから」

「っ……おまえ、この娘と付き合ってるとでも言うつもりか?」

「だったら、なに? 婚約を破棄されて困るのは、父さんだけだろ。俺はべつに……」

 その瞬間、頬に熱い痛みが走った。

「うちの社の全社員の生活がかかっているんだぞ。なにを勝手なことを!」

「勝手なのは父さんの方だ。そんな会社……もう潰れればいい」

 俺はぎりっと奥歯をかみしめると、静かに立ちあがってリビングを出た。