「よかったぁ! 梶くん、元気になって」

 翌朝学校に行くと、昇降口のところで鮎川さんに声を掛けられた。

「昨日はぶどうゼリーありがと。おいしかった」

「でしょでしょ!? あれね、今うちのイチオシなんだぁ」

 そう言って、鮎川さんがニコッと笑う。

「……あのさあ。俺なんかとしゃべってていいの?」

「へ? なんで?」


 当時の俺は、真面目で面白味の欠片もないヤツってレッテルを貼られ、完全にクラスで浮いていた。

 自分のことは、正直どうでもよかった。

 小学校のときだってずっとそうだったし、いろんなことに煩わされることもないから、ひとりの方が気楽だって思ってたくらいだ。

 だけど、そんなヤツといっしょにいたら、鮎川さんまでおかしなウワサを立てられやしないかと、それだけが心配だったんだ。