ピーン、ポーン。

 しばらくするとインターフォンが鳴り、口にマスク、おでこに冷えピタで小さく玄関ドアを開けると、鮎川さんの手がにゅっと入ってきた。

「これ。昨日借りた傘。それから、お見舞い」

「お見舞いなんかいいって」

 遠慮する俺の手に、鮎川さんはビニール袋を無理やり握らせてきた。

「昨日の仕返し。じゃあね!」

 そう言うと、たったったっと廊下を走って遠ざかっていく足音が聞こえた。

 ……って、宿題プリントなんか持ってきてないじゃん。

 ほんと、嵐みたいな人だな。

 ふっと笑うと、俺はビニール袋の中をちらっと覗き、キッチンにスプーンを取りにいった。