「待ってよ、母さん。それに父さんも。俺なりにいろいろ考えたんだ。自分はどうすべきか。どうしたいのか」

 言い争いをやめた父さんと母さんが、黙って俺のことをじっと見つめてくる。

「俺さ、自分で思ってたより、ずっと欲張りだったみたいなんだ。最初は、ただ自由になりたいって思ってた。でも、だったら父さんと母さんはどうなったっていいのか? って考えたら……そんなわけなかった。俺は、セブンオーシャンの社長になって、全部を守りたいんだ。鮎川さんのことも……それに、父さんたちのことも。生意気なことを言ってるってことくらいわかってる。でも……俺のわがまま、あと一度だけ許してください。おねがいします」

 父さんたちに向かって深々と頭を下げると、そんな俺のことをじっと見下ろす父さんの強い視線を感じた。

 しばらく沈黙が続いたあと、父さんの深いため息が聞こえた。

「まったく。本当に生意気なことを。セブンオーシャンの社長になって、全部を守りたいだと? ……できるものならやってみろ」

 そう言い残すと、父さんは席を立ってリビングを出ていった。