翌日、待ち合わせ場所の駅前の時計塔の下に、ふてくされた顔のあゆあゆがやってきた。

 まだ怒ってるんだ……。

 近くのドーナツ屋さんに入ると、あゆあゆはオレンジジュースだけ注文した。

 いつもなら、生クリームのたっぷり挟まったドーナツも注文するのに。

 なんだかあゆあゆが気持ち痩せたような気がするんだけど……気のせいだろうか?


 店内はそこそこ混雑していたけど、みんなそれぞれ自分たちの会話に夢中で、ちょっと重い話をするには逆に好都合だった。

「……ねえ、カジカジはどうして七海学園に入りたいの?」

 単刀直入に、あゆあゆが俺に尋ねてきた。


 でも、許嫁がいるなんて話は、さすがにできっこない。

 相手に会ったのは、まだ俺が小学校の低学年くらいの頃に一度だけ。

 だから、やましいことなんてなにひとつないんだけど、さ。