実はね、カジカジに頼まれて、週末、いっしょにショッピングに出かけたんだ。

「俺を鮎川さんにふさわしい男にしてほしいんだけど」なんて真顔で言われたときは、申し訳ないけどおもいっきり吹いちゃった。

 だけどさ。カジカジの変身、大成功だったんじゃない!?

 いつもはカジカジのことを悪く言ってばっかの早苗が、カジカジのこと「イケメンがいる」なんていってはしゃいでさ。

「それから、うちのことは『あゆ』って呼んでって言ったでしょぉ?」

「それはムリ」

「うわっ、ひっどーい」


『ねえ、あれマジで梶くん?』

『メガネ取って髪型変えただけで、全然雰囲気ちがーう』

『陰キャだとか言ってたの、誰よ。全然イケメンじゃん』


 わかってると思うけど、うちはカジカジがイケメンだから好きになったわけじゃないからね?

 ああいうときに、自分のことを後回しにして傘を差し出せる人だから、うちは好きになったの。

 みんな、まだまだカジカジの本当のいいところに気付いてないんだから。

 ううん、気付かなくっていいや。

 だって、カジカジはうちだけのものなんだもん。