「ねえ、あゆ。あそこ、めっちゃイケメンがいるんだけど」

 週明けの月曜の朝。廊下をいっしょに歩いていた友だちの早苗が、うちの制服の袖を引っ張った。

「どこ?」

「ほら、あそこ! 今、うちのクラスに入ってった男子! 横顔がチラッと見えたの。あんな男子、うちのクラスにいたっけ? ひょっとして転校生!?」

 早苗に腕を引かれて駆け足ぎみに教室に入ると、教室内が異様にざわついていた。

「カジカジおはよー」

 うちがカジカジ――梶くんの斜め前の自分の席に座る前に声を掛けると、メガネのないカジカジの顔がうちを見あげた。

「おはよう、鮎川さん。っていうか、学校でもカジカジって呼ぶつもり?」

 カジカジに顔をしかめられ、うちは口をとがらせた。

「えー、いいでしょ、べつにぃ」