「梶くんだって。一本しかない傘、うちに貸して風邪ひくなんて、わけわかんないよ」

「……あのさあ。俺も鮎川さんのこと、好きみたいなんだけど」

 俺は、鮎川さんの耳元で囁くように言った。

「ねえ、こういうときって、どうしたらいいの? 俺、こんな気持ちになるのはじめてだから、わけわかんなくなってる」

「そういうときは、相手に気持ち伝えて――」

「うん。もう伝えた」

「だったら……」

「付き合ってくれるか、聞いてみる?」

「うん。そう」

「じゃあ……俺と付き合ってくれる?」

「……うん。いいよ」

 鮎川さんも俺の背中に手を回すと、自分の頭を俺の胸に預けてきた。