私を抱きしめる腕にはタトゥーがびっしりと入っていて、煙草の匂いがする。

後ろから顔をのぞかせてにんやりと私を見たその人は、みたことのない坊主頭の人だった。



「へーかわいいじゃーん」



そう言って坊主の人が、


ちゅっ。


私のこめかみに吸いついた。


「……!?」


全身の血液がサ―…と引いていって、気持ち悪さで体温が急速に下がるのを感じた。

柊哉くんが私と同じく目を見開いて硬直している。


「俺さー、むかし鴻柊哉に女寝取られたことあんだわぁ」


耳元で聞こえた冗談みたいな言葉に耳を疑う。


え…?ねと、…?てか、キ、


「鴻くん、遊びでしか女と付き合わねぇってもっぱらの噂だったよな。この女も別に本気じゃねぇんだろ?」


表情が読み取れない柊哉くんが無言でゆらりとこちらに足を向ける。


「いくらあんたでも流石にこの人数相手に勝てるなんて思ってないよな」